あれ?なんだか肌寒い、と思ったら、
いつの間にか本格的な秋になっていました。
無我夢中で作業をしているうちはいいのだけれど、
やれやれ、と思ったとたんに、小さなことが気になり出す。
もう少し、いい仕事ができたはずなのに、とあれこれ考え始めて自己嫌悪になったり、
鏡をのぞいて、「アレ、また一段と老けやがった」なんてぞっとしたり。
そういう時に限って、嫌な知らせが舞い込んでくる。
急に自信がなくなって、なんだか動き出せなくなる。
ひんやりした秋風を感じるたびに、過去の自分の失敗の数々がフラッシュバックしてきたりして・・・・。
昔、まだ出版社に勤めていたころ、
なにかの仕事の失敗で落ち込んでいた私に、 仕事仲間の編集者が、
「しょんぼりしたときは、『紀の善』に行くといいよ」
と言ってくれました。
「紀の善」とは、神楽坂を下ったところにある和風喫茶店で、
勤めていた会社から歩いて15分ほど。エスケープにはもってこい。
アドバイスに従って、会社を抜け出し、読みかけの本だけ持って、一息つきに行ったのです。
神楽坂ブームのおかげで、今や並んで入るほどの繁盛ぶりだけど、
昔はそれほどでもなく、 お店は静かなものでした。
日本茶をふうふう吹きながら飲んでいると、不思議と落ち着き、
なぜかわからないけど、
「大丈夫、それでいいんだよ」
と言われていような気がして、なんとなく慰められたものです。
和の雰囲気の持つ懐かしさに、ほっとしていたんですね。
その後2回くらい、「紀の善」にはお世話になって、
会社を辞めた後は行っていません。
数年前、
仕事で、ある作家さんに無理なお願いをして怒鳴られた日の帰り道には、
鯛焼きを買って帰ってきました。
小学校で、先生に叱られたか、なにかいやなことがあって、しょんぼりして帰ってきた日、
母が用意してくれたオヤツを食べているうちに、
ほっとして、安心することができたのを思い出したものです。
だれだって、凹むことはある。
カラ元気を出すのもいいけど、自分の感情に無理にフタをしないほうがいいんじゃないのかな?
そんなときは、 ヤケ酒、ヤケ食い、精神安定剤などに走る前に、
懐かしい食べものを前にして、ひと時、郷愁にひたるのはどうかしら。
ところてん、あんみつに、焙じ茶に鯛焼き、かっぱえびせん。
私の場合は、 それがどんな薬より、一番効きます。
栄養価としてもカロリーとしても、イマイチですけど、よいではないですか。
「体に悪いけど、心にいいもの。」
体の健康より、まずは心の健康を優先させたほうが、いい。
食べものの意義は、栄養価やカロリーだけじゃない。
「郷愁」の占める割合は、案外と大きいんじゃないだろうか。
思い出の食べ物で一時子どもに戻り、愛された記憶を思い起こして――。
そうしているうち、心も、体も、元気を取り戻すことができるんです。
年々甘いものが苦手になる私、最近の「しょんぼりフード」は、 「サッポロ一番みそラーメン」。子どものときのごちそうでした。 家族がいないある土曜の昼に、祖父が煮てくれたのが忘れられません。 「じいちゃんは、2つだ」って言って、自分だけ2袋煮ていて、 まだガスの使えない私はうらやましかったなぁ。 |
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