2013年10月4日金曜日

体に悪いけど、心にいいもの

大きな仕事が終わって、
あれ?なんだか肌寒い、と思ったら、
いつの間にか本格的な秋になっていました。

無我夢中で作業をしているうちはいいのだけれど、
やれやれ、と思ったとたんに、小さなことが気になり出す。
もう少し、いい仕事ができたはずなのに、とあれこれ考え始めて自己嫌悪になったり、
鏡をのぞいて、「アレ、また一段と老けやがった」なんてぞっとしたり。
そういう時に限って、嫌な知らせが舞い込んでくる。

急に自信がなくなって、なんだか動き出せなくなる。
ひんやりした秋風を感じるたびに、過去の自分の失敗の数々がフラッシュバックしてきたりして・・・・。

昔、まだ出版社に勤めていたころ、
なにかの仕事の失敗で落ち込んでいた私に、 仕事仲間の編集者が、

「しょんぼりしたときは、『紀の善』に行くといいよ」
と言ってくれました。

「紀の善」とは、神楽坂を下ったところにある和風喫茶店で、
勤めていた会社から歩いて15分ほど。エスケープにはもってこい。
アドバイスに従って、会社を抜け出し、読みかけの本だけ持って、一息つきに行ったのです。

神楽坂ブームのおかげで、今や並んで入るほどの繁盛ぶりだけど、
昔はそれほどでもなく、 お店は静かなものでした。

日本茶をふうふう吹きながら飲んでいると、不思議と落ち着き、
なぜかわからないけど、
「大丈夫、それでいいんだよ」
と言われていような気がして、なんとなく慰められたものです。

和の雰囲気の持つ懐かしさに、ほっとしていたんですね。

その後2回くらい、「紀の善」にはお世話になって、
会社を辞めた後は行っていません。

数年前、
仕事で、ある作家さんに無理なお願いをして怒鳴られた日の帰り道には、
鯛焼きを買って帰ってきました。

小学校で、先生に叱られたか、なにかいやなことがあって、しょんぼりして帰ってきた日、
母が用意してくれたオヤツを食べているうちに、
ほっとして、安心することができたのを思い出したものです。

だれだって、凹むことはある。
カラ元気を出すのもいいけど、自分の感情に無理にフタをしないほうがいいんじゃないのかな?

そんなときは、 ヤケ酒、ヤケ食い、精神安定剤などに走る前に、
懐かしい食べものを前にして、ひと時、郷愁にひたるのはどうかしら。

ところてん、あんみつに、焙じ茶に鯛焼き、かっぱえびせん。

私の場合は、 それがどんな薬より、一番効きます。

栄養価としてもカロリーとしても、イマイチですけど、よいではないですか。

「体に悪いけど、心にいいもの。」

体の健康より、まずは心の健康を優先させたほうが、いい。

食べものの意義は、栄養価やカロリーだけじゃない。

「郷愁」の占める割合は、案外と大きいんじゃないだろうか。

思い出の食べ物で一時子どもに戻り、愛された記憶を思い起こして――。

そうしているうち、心も、体も、元気を取り戻すことができるんです。


年々甘いものが苦手になる私、最近の「しょんぼりフード」は、
「サッポロ一番みそラーメン」。子どものときのごちそうでした。
家族がいないある土曜の昼に、祖父が煮てくれたのが忘れられません。
「じいちゃんは、2つだ」って言って、自分だけ2袋煮ていて、
まだガスの使えない私はうらやましかったなぁ。

0 件のコメント:

コメントを投稿