2015年1月7日水曜日

小さなトゲ

晩秋のある日曜日。
ジャングルのようになった我が家の狭い庭で、木を切り、つるを引っ張り、半日格闘しました。
がんばったおかげで、陽当たりがよくなり、やれやれと思っていたのですが、
作業を終えたあとから、右手親指の先っぽがチクチク痛むのです。

めがねをはずしてよくよく見れば(老眼です)、
親指の先ちょに、小っちゃいこげ茶色の点。

トゲだー!

料理をするにもパソコンをたたくにも、なんにしてもチクチク不快なので、
針と毛抜きを準備して明るい場所にどっかと座り込み、
親指の腹を、人差し指でぎゅーっと押さえつけました。

「……見えない」

おかしなことに、針でつっつこうとすると、なぜかトゲは奥へ奥へと入り込み、見えなくなってしまうんです。
でも、痛みは明らかだから、なんとかそれっぽいところを針でほじってみる。
ますますトゲは見えなくなってしまう。

おかしいな?

あきらめて針を片付けてしまって、ふと見ると、
再びこげ茶色のトゲが存在を主張してる。
また、針を出してきて、さて、とろうと親指と対峙すると、見えなくなる。
何回かそんなことして、あきらめました。

どうしよう、このトゲ。
でもま、いいや。
木だし、自然のものだし、大丈夫でしょう、と思って、
チクチク痛いことは痛いのですが、気にしないことにしました。

私の右手には、エンピツの芯が入っています。
小学生だった私は、手にエンピツの芯が入ったまま皮膚でふさがれてしまったことに恐怖を覚え、母に右手を見せて、大変なことになった、と訴えました。
すると母はこともなげに、
「大丈夫だ、お母さんの肘には小石が入ってる!」
と自分の肘の皮膚に入った石を触ってみせたのでした。

そんな荒っぽい育ちですから、人の皮膚の中にはいろんなものを入れても案外平気なのだなぁ、ということは子どものころから知っていたので、
木のトゲもまあ、そんなもんでしょ、とは思いました。

ところが困ったことに、チクチクの痛みはなくならない。
少しは日々痛みの度合いが薄れてるようには思えても、
やっぱりチクっとするんですよね。
鉱物ではないから、木トゲが少しずつ溶けてなくなる、なんてことがあるかもしれないと思っていたけれど、
こげ茶色のトゲは相変わらずしっかり見える状態。

さあ、いったいどうしたものか。

そのままの状態で、3週間経過。

3週間後のある夕方、
仕事から家に帰りついて、フト気が付いた。トゲが取れているではありませんか。
いつの間にか。
自然に。
そして、あのチクチクいう不快な痛みもまったくなくなっていました。

トゲは、いったい、いつの間に、皮膚から飛び出ていなくなったんだろう?
とっても不思議。

自分の治る力を信じて、気にしないで放っておく。
これでたいていのことは治ると信じているけど、
やっぱりそうだった!と思って、なんだかとってもうれしかった出来事でした。

ま、たかが小さなトゲ、なんですけどね。

庭で伸び放題のカクテル。
このコのトゲではないと思う・・・。
もっと分厚いガーデン用の手袋買ってこなくちゃ。