ご近所のおじさんが、毎年庭先にそれは立派な青じそを育てています。
伸びすぎた部分を摘んでは我が家に枝ごと持って来てくれるので、夏の青じそは買わずにすんでしまうくらい。
じつは、我が家にも青じそ、庭にあるんですけどね……。
バッタに食べられていつも丸裸。
そう言うと、
「そうでしょう? お向かいのIさんもそう言ってた。ウチはなぜか虫にやられないんだよね。たぶん根元にニラが植えてあるからだと思うよ」
とおじさんちょっと得意げ。
大きいのや小さいの、枝からすべてはずすのは一苦労なんだけど、青じそは大好きだし、本当に助かるから、毎度青じその枝を玉串のごとく押し頂くのです。
で、夏が終わると、これも恒例、ふさふさと穂を付けた、ほとんど木みたいになったやつを持って来て下さる。
この処理がまた一苦労でして、仕事がたてこんでるときなどは半べそなんですが、実をはずし、あくをとって塩漬けにしたあと、めんつゆにつける。これをご飯と食べると、最高にうまいのです。
「お向かいのIさんちにもあげたら、喜ばれたよ!」とおじさん。
どうやら、青じそおしまいの儀式は、ウチとIさんちに枝を分けたことで完了したらしい。
台所がいっぱいになるような枝ぶりの青じそと格闘して、小びんにいっぱいのしその実漬けができました。
後日、そのIさんとの話。
「いっぱい青じその実がついてるの、もらったでしょ?」
「もらったもらった」
「けっこうあれ、大変よね」
「ウン、大変」
「でも、しその実って、あれよね、エゴマとかと一緒でしょ? アルファなんとかって、すごいいい油なのよね」
巷で話題の、αリノレン酸。オメガ3という、血栓を防ぐ、アレルギーを防ぐ、等々すごい効果の油ではないですか。おいしいだけじゃないパワーフードだったんだ。
一気に労力が報われた気分。
「お礼にお向かいに実を漬けたの持っていったらね、『オレ実は食べないんだよね』だって」
「そうだよ、去年私が持ってったときもそう言ってた」
αリノレン酸だよ、体にいいよって言ったら、おじさん、食べるかしらね?