2017年4月24日月曜日

繊維を効率よく食べる方法

前回に続いて今回も千切り礼賛です。


このあいだ、おもしろいテレビを観ました。
乳酸菌入りの飼料を家畜に食べさせることで、美味しい肉を作り、いい肥料を作る、という、乳酸菌のベンチャー企業についての放映。

牛のエサに特別な乳酸菌を配合して食べさせることによって、腸内の悪玉菌が減る。
悪玉菌が減った牛糞や尿に木くずを混ぜて発酵させると、有害な菌が死んで、牛のうんこがいいニオイになる。その上、牛が病気にかかりにくくなる。
臭くない牧場で育った牛はストレスもなく、おいしい肉になるのだそう。そのうんこを肥料にして育てた野菜がまたうまいといいことづくめ(2017年2月27日テレビ東京「クロスロード」)。

牧場では、社長の内藤義夫さん自ら牛のエサをチェックして回る。見ると、社長、やおら牛のえさを口に入れる。カットされた草を牛が食べているエサ箱からつまんで試食。 そして、牧場の主に声をかける。
「刃、研いでる?」
「あ、最近ちょっと」
「研いだほうがいいよ」
手元の草を見せると、草の切り口がちぎれている。「こうなってしまうと、繊維がつぶれてしまってもったいない。なるべく繊維は効率的に摂りたいから」
腸内で乳酸菌が元気に働くためには、大量の繊維が必要です。牛さんがせっせと食べている大量の草は機械でカットしますが、その刃がしっかり研がれていないと、切り口がぐしゃっとなってしまう。繊維がつぶれてしまうのですね。

このくだりを見て、ハハァ、なるほど、と、あることに初めて合点がいきました。

数年前、包丁を作る職人の親方に取材をしました。
店頭にあるさまざまな包丁を紹介しながら親方の奥さんが言った言葉が、ずっと私の頭に残っていました。
「包丁で料理を作るということが、健康のために一番大事なことなんですよ。包丁を使わないで生活している人は、病気になります」
そりゃ、コンビニで出来あいのものを買う生活よりも、包丁で野菜や肉を刻んだほうが健康的な食生活であることはなんとなく理解できる。だけど、包丁と健康の関係性には、「なんとなく」じゃなくて、論理的な裏付けがほしい。残念ながら記事にはできませんでした。
そうだったんだ、こういうことだったんだ! と思いました。

繊維を効率よく摂るためにこそ、包丁は大切。
日本人は古来、繊維質をたくさん摂ってきた民族。その食生活と健康を支えるのに、よく切れる包丁が大きな役割を担ってきたのに違いないです。
あの奥さんも、そのことをほんとうは言いたかったんでしょう。

「よそのメーカーの包丁でキャベツ切り出したら、評判悪くなったんで、またお宅の包丁に変えたよ」と、人気のトンカツ屋さんに言われたと、包丁屋の親方がうれしそうに話していたのを思い出します。

女優でエッセイストでもあった沢村貞子さんは、晩年の朝食にサラダを欠かさなかったそう。
そのサラダが、「冷蔵庫にある野菜を手当たり次第刻みこんだ」もの。
そのサラダにならって、最近の我が家の定番もそういうサラダ。ありもの野菜をトントンと刻んでボウルにふんわり盛り付けています。
不思議とレタスをちぎったサラダより我が家の男どもに人気。

ぶきっちょながら、自分で研いだ包丁で、できるだけ野菜の細胞を傷つけないように切っているつもり。そのせいか、翌日、翌々日まで残してもいたまず、美味しく食べられるのです。
あ、スライサーで切ってもいいのですが、スライサーの切り口は以外とギザギザなのです。にんじんサラダのように、ドレッシングの味をよくしみこませるために切る場合はスライサーでもよいけれど、スライサーで切ると野菜の細胞を傷つけてしまうので、よく研いだ包丁できるよりも日持ちは悪くなります。
それに、スライサーは手を切りやすいのでご用心。ギザギザだから、包丁で切るよりも、かなり、痛い。ご用心。

繊維をたっぷりとるためにも、私は包丁派です。



にんじんに大根、ピーマンや玉ねぎなど
なんでもかんでも。
野菜のみにして、ハムや卵の類を混ぜない主義。